本ウェブサイトは、医療関係者の方を対象に「オプジーボ(一般名:ニボルマブ)」に関する情報を提供することを目的としています。

製品に関する重要なお知らせ

がんチーム医療ナレッジ 新たなチーム医療のかたち 看護師による irAE マネジメントの取り組み 「看護力」と「患者力」を高めながら、多彩な irAE をチームでマネジメント

改訂日:2024年7月
取材日:2022年7月30日(土)

免疫チェックポイント阻害薬(ICI)の適応拡大とともに、免疫関連有害事象(irAE)のマネジメントの重要性が広く知られるようになりました。irAE の症状は多彩であり、irAE であることに気づかずに見逃してしまうこともあるため、患者さんや家族と情報を共有し、医師、看護師、薬剤師などの多職種がチームとなって、早期発見、早期治療介入につなげることが重要です。本インタビューでは、新潟県立がんセンター新潟病院、筑波大学附属病院、埼玉医科大学国際医療センター、国立がん研究センター中央病院の4 施設においてがん診療に携わる看護師の方々に、各施設のチームの現状と課題、irAE 早期発見のための取り組みなどについて伺いました。

記事内容

  • 磯貝 佐知子 看護師(新潟県立がんセンター新潟病院 がん化学療法看護認定看護師)磯貝 佐知子 看護師(新潟県立がんセンター新潟病院 がん化学療法看護認定看護師)
  • 入江 佳子 看護師(筑波大学附属病院がん看護専門看護師/緩和ケア認定看護師)入江 佳子 看護師(筑波大学附属病院がん看護専門看護師/緩和ケア認定看護師)
  • 玉木 秀子 看護師(埼玉医科大学国際医療センター がん看護専門看護師/ がん化学療法看護認定看護師)玉木 秀子 看護師(埼玉医科大学国際医療センター がん看護専門看護師/ がん化学療法看護認定看護師)
  • 富樫 裕子 看護師(国立がん研究センター中央病院 がん化学療法看護認定看護師 副看護師長)富樫 裕子 看護師(国立がん研究センター中央病院 がん化学療法看護認定看護師 副看護師長)

※ ご所属、役職は取材時点(2022年7月)のものとなります

irAE 早期発見のための取り組み:「看護力」を高める

各施設における看護スタッフ教育の実際

irAE 早期発見のためには、症状のモニタリングやアセスメント能力など「看護力」を高めることが求められます。看護スタッフ教育での取り組みについて、埼玉医科大学国際医療センターの玉木秀子看護師は、「当院では『ナーシング・スキル』という看護教育ツールや、独自に作成した教材を用いてe- ラーニング研修を行っています。また、当院には資格取得を目指した院内認定看護師制度があり、これまでに約20 名の院内認定看護師を輩出しています。院外の看護スタッフ教育に関しては、がん薬物療法などをテーマに地域連携カンファレンスを開催しています」と話します。
筑波大学附属病院の入江佳子看護師は、「当院では10 年以上前に看護部ラダー研修を開始し、がん化学療法の基礎知識、セルフケアを促す看護などについて研修を行っていましたが、2020 年からはがん医療者研修に移行し、院内外のがん医療に興味のある多職種を受講対象としています(図1)。オンライン聴講で全国から毎回約100 ~ 150 名の医療者が参加し、アーカイブ配信も行っています。今年度もがん看護ベーシックセミナーを6回開催する予定ですが、第1回~6回まで全て受講した方には修了証を授与するなどモチベーション維持のための工夫を行っています。このほか2017年から院内認定看護師として、抗がん剤静脈注射看護師の養成に取り組んでいます」と語ります。

また、国立がん研究センター中央病院の富樫裕子看護師は、「当院はがん専門病院であり、入職1 年目から計画的に薬物療法に関する研修を行っていますが、さらに勉強したいスタッフに向けて、がん化学療法看護認定看護師が中心となって『寺子屋』と称する勉強会を10 年以上前から続けています。この勉強会への参加を機に、がん化学療法看護認定看護師を目指す看護師も多く見受けられます。院内外の5 年目以上の看護師を対象としたがん看護専門教育としてのがん薬物療法看護研修も毎年2 日間にわたり開催しています。この研修はがん薬物療法における最新の知識・技術とその実際について理解を深め、がん薬物療法を受けるがん患者と家族のQOL 向上を目指した主体的な療養生活を支援することを目的としており、2 年前からは研修生のニーズに合わせ講義の1 コマとしてirAE に関する講義も追加しました。また研修内ではがん薬物療法における意思決定支援およびチーム医療の必要性と看護師の役割について討議する時間を設けています。毎年研修生から各施設における取り組みや課題などを聞くことができ、大変勉強になります」と話します。新潟県立がんセンター新潟病院の磯貝佐知子看護師は、「当院でもがん看護研修ベーシック編・アドバンス編を毎年開催しており、その中でがん薬物療法についての講義を行っています。ここ数年は感染症対策により集合研修が難しくなっていることもあり、ナーシングスキルやZOOM など、配信による研修法を取り入れています。また重篤なirAE が院内で発生した際には、カンファレンスやキャンサーボードで症例を共有しています。症状や経過・対策を共有することは自身の経験の共有となるため、irAE の早期発見対応のための学びの貴重な機会と考えます。また当院は県立病院のため県内での人事異動があること、外来はワンフロア化として業務を行っていることより、化学療法室専任以外の看護師が関わることがあります。問診表を使用しての問診を行うことで必要な観察ポイントを学ぶ機会にもなっています」と語ります。

irAE 早期発見のための取り組み:「患者力」を高める

irAE に関するセルフモニタリング・セルフケアの重要性

irAE 早期発見のためには、患者さんが自身の症状をモニタリングし、その結果を医療者に適切に伝えることが重要です。こうした「患者力」を高めるためには、患者さんのセルフケア能力に応じたセルフチェック方法の指導や、患者家族を含めた指導も大切です。入江看護師は「ICI 治療が複雑化するなか、irAE を見逃さないためには、患者力の向上と医療者側の体制強化の両輪で取り組む必要があります。スクリーニングで拾い上げるためには、患者さんが自身の症状を訴えられるように教育しなければならないと感じています。また、看護師は自身の体験をベースに患者教育を行っている傾向がみられますが、その患者さんにとって必要な教育を優先して行うことが大切だと思います」と語ります。
玉木看護師は「当院ではirAE に関する問診票を診察前に患者さんにチェックしていただき、症状の拾い上げを行っています。問診票への記載率は98%に上ります。このような高い水準を維持している要因として、問診票は医療者が必ず確認していることを患者さんに伝えていることや、症状などについて丁寧に患者さんに説明していることが考えられます。問診票はICI と殺細胞性抗がん薬との併用開始を機に改訂しました。また、医師や薬剤師などがそれぞれの立場から重ねて説明することも大切だと考えています」と話します。
富樫看護師は「ICI が登場した当初は、外来看護師による診察前の問診票を用いたスクリーニングを積極的に実施していましたが、ICIを使用する診療科が広がるにつれてマンパワーが不足し、現在は全ての診療科では実施できていません。その一方で遠方から来院される患者さんに対しては、irAE を疑う症状が出現した場合に、自宅の近くで速やかに対応できる病院をあらかじめソーシャルワーカーと連携して探しておくなど、緊急時に備えた支援を行っています」と話します。
患者日誌も患者さんのセルフモニタリング能力の向上に寄与すると考えられますが、記録を続けてもらうにはさまざまな工夫が必要です。磯貝看護師は「当院も患者日誌など、さまざまなツールを活用しています。『強制』にならないように配慮し、患者さんの個性に合わせて『できる』方法を一緒に考え、できていることを『ほめる』ことが、患者さんのモチベーションの向上につながると思います。
また、治療期間が長くなるにつれてモチベーションの維持が難しくなるため、患者さんの治療への姿勢や思いなどを問診時や治療時に意識的に確認するようにしています」と、患者力を上げるためのポイントについて話します(図2)。

がん患者を取り巻く現状と患者教育の課題

患者さんを取り巻く現状について、富樫看護師は「独居の高齢患者や老々介護の世帯が増えていることから、自宅で体調が悪化した際にサポートできる家族や友人がいるのか、介護保険の申請・認定状況、介護サービスの導入状況など、その患者の療養環境を把握し、必 要時には他職種と連携し支援体制を強化しながら、症状が出現した場合も早期発見につなげられるように心がけています」と話します。
玉木看護師は「私も、高齢、独居など患者さんの背景が複雑になってきていると感じています。そのような患者さんは、本来は地域連 携で支えながら治療を進めていくのが望ましいのですが、その必要性を感じていない患者さんが多いのが現状です。かかりつけの医療機関が当院のみという状況下で、がん薬物療法を続けているケースは少なくありません。通院時間が1 時間半以上かかる場合には地域と連携するといった線引きがあると、患者さんにも連携を勧めやすいと思います。地域連携においては訪問看護師との協働、いわゆる『看看連携』が重要になります。訪問看護師は自宅で療養中の患者さんをよく観察していて、患者さんの異変をキャッチして病院に連絡、といった連携に至ることもあります」と、地域連携の重要性を指摘します。
入江看護師は「患者教育においては、看護師のアセスメント力を高める必要があると感じています。また、患者さんのなかには数週間前に出現した症状を忘れてしまい、問診票に反映されないこともあるため、患者日誌とスクリーニングが一体化したような取り組みを検討しています」と、現在の課題や検討中の対策について話します。
また、磯貝看護師は「例えば、外来看護師と病棟看護師の説明が異なると、患者さんは不安に感じることから、院内において統一した教育を行う必要があると感じています」と指摘します。

irAE 早期発見のための取り組み:「チーム力」を高める

irAE マネジメントにおける各施設のチームの課題

irAE を見逃さないためには、特に患者と接する機会の多い看護師や薬剤師などの多職種が連携してチームで対応することが重要です。近年、チームづくりにおいて「チーミング」という概念が注目されています。この概念の提唱者であるエイミー・C・エドモンドソンは、「チーミングとは協働するという“ 活動” を表す造語であり、組織が相互に絡み合った仕事を遂行するための、より柔軟な方法である」としています1)図3 は、「チーミング」と、「学習するための組織づくり」と、「学習しながら実行する」ことの関係をピラミッドで表しています。「学習しながら実行する」ことの土台となる「チーミング」を成功させるためのポイントとして、率直に意見を言う、試みる、協働する、省察することが挙げられています。「チーミング」の次の層である「学習するための組織づくり」では、境界を超えて通じ合う、失敗から学ぶ、心理的安全を生み出す、学習するための骨組みをつくること、が重要となります(表1)。そして、ピラミッドの最上部に位置する「学習しながら実行する」は、診断(状況を把握する)、デザイン(行動するための具体的な計画を立てる)、行動(経験を学習するための試みとして考える)、省察(結果を評価する)の4つのステップからなります(図3)。また、チームが適切に機能するために重要な人間関係において、「物理的な隔たり」、「立場の違い」、「知識・専門性など」が障壁となることがあります(表2)。これら3つの障壁を超えて、チーミングを実現するためには、チームにとってチャレンジすべき問題を解決する必要があります。物理的な隔たりによる誤解に対しては他のメンバーの職場を定期的に訪れる、立場の違いが障壁になっている場合はリーダーシップによって一体感を生み出し、その障壁を最小限に抑える、知識・専門性などに起因する障壁に関しては、専門技術に基づく知識を常に共有する、などの対策を講じることが不可欠です(表2)。

こうしたチーミングの概念を踏まえて、各施設におけるチームの課題について伺うと、磯貝看護師は「当院では『Team iSINC』という免疫療法サポートチームを立ち上げ、ICI 治療を安全に行うためのシステムづくりに取り組んできました(図4)。チームのコアメンバー間の結束は固く、コミュニケーションも良好です。今後は他のメンバーとのコミュニケーションも深めてチーム全体の士気を高めること、後進の育成が課題だと感じています」と語ります。

入江看護師は「当院のirAE 対策チームは30 名以上のメンバーからなり、conflict の解決が大きな課題だと感じています。加えて、提案者に負担が集中しないように役割を分担することも大切です。また、決まったことに対して定期的に見直すという習慣がなく、漫然と継続されがちであるため、改善策などを提案しやすい環境をつくることも重要だと思います。そのため、メンバー全員がチーミングの概念を理解して、『心理的安全が確保されたチームをつくる』というコンセンサスが重要だと思っています。そして、管理的な立場にあるリーダーがチーミングの概念を十分に理解し、スキルを意識して身に着けない限り、医療現場は変わらないと感じています」と語ります。
富樫看護師は「当院では他職種カンファレンスを盛んに開催しており、様々な職種の意見を取り入れて診療に活かしています。しかし、カンファレンスで発言するのは特に看護師は一部のコアメンバーであることが多い現状にあります。私としてはもっと経験年数が少ないスタッフからも日頃の実践から疑問に感じたこと、困っていることなど声を上げてほしいのですが、カンファレンスの場で自身の考えを発信することは、アセスメント力や薬剤の知識を求められることがあり難しいのではないかと感じています。irAEに関しては、病棟、外来でそれぞれ事例検討を行っていますが、今後は全体で情報を共有し、方向性を見出せるようなチームづくりを目指したいと考えています」と話します。
また、玉木看護師は「当院では月に1 回、チームメンバーが集まって『ICI 有害事象対策会議』を開催しています。チームが発足してから6 年近く経過していますが、新たに参加したメンバーも含めて『チームの質』を維持していきたいと考えています。メンバー間で治療に関する意見が異なることもありますが、十分に話し合って、その患者さんにとって最善の治療を提供することが大切だと思っています。そのためには、足をとめて話し合えるようなゆとりを持つ必要があります。患者さんが増加し、治療の強度も高まるなかで、どのようにゆとりをつくっていくかが課題だと感じています」と語ります。

チーム内における看護師の役割と今後の展望

チーム内における看護師の役割や今後の展望について、入江看護師は「看護師によって果たす役割は異なると思いますが、一人ひとりが『自分がこのチームにどのようにコミットして、どのような貢献ができるのか、役割が果たせるのか』を考えながら、同じ方向に向かっていけるとよいと思っています。また、コアメンバーが不在であっても対応できるように体制を整える必要があると感じています。そして、『安全に治療する』ためにメンバー間のコミュニケーションを深め、例えば医師が困っていたら、他のメンバーもその困りごとを共有することが、解決につながると思います」と語ります。
富樫看護師は「患者の目標や今後の方針を『見える化』することも重要だと考えています。私の病棟では、患者ごとに、方針、必要な支援や指導項目、進捗状況、問題点などをA3サイズの用紙に書き出してナースステーション内に掲示しています(図5)。チームで同じゴールを目指す上で有効な取り組みだと感じています」と話します。
また、玉木看護師は「その患者さんにとって最善と考えられるケアプランを立て、それを実施していくことが看護師の重要な役割だと思っています。当院ではハイリスク患者さんを中心に治療継続支援を強化しています。また、カンファレンスに参加して医師の考えなどを直接聞き、看護師が診療に必要な情報を電子カルテに記載することもスムーズな連携につながると思っています」と語ります。
最後に、磯貝看護師は「病状や治療目的などの理解も必要ですが、患者さんが治療に対してどのように思っているか、また今後どのように過ごしていきたいか確認した上で、チームの話し合いに参加することが大切です。また、医師に意見を伝える際には、『なぜそのような意見を伝えたいのか』を意識しながら話し合うことが重要だと思います。加えて、チーム内のメディカルスタッフは看護師だけではないので、その医師との相性も考慮して意見を伝えるスタッフを決めるのも一案だと思います」と話します。
今後、ICI 治療はさらに複雑化すると考えられるため、より一層、看護力、患者力、チーム力の向上を図り、irAE の早期発見、早期治療介入に努めていくことが求められます。

  1. 文献
  2. 1)エイミー・C・エドモンドソン著, 野津智子訳:チームが機能するとはどういうことか. 英治出版, 2014

※所属、役職等は取材当時のものとなっております。

施設情報