原発不明がんの定義・疫学
●原発不明がんとは?
「原発不明がん」とは、十分な検索にもかかわらず、がんが最初に発生した原発巣が不明で、組織学的に転移巣と判明している悪性腫瘍のことを指します1)。
原発不明がんは、全がん種の 1〜 5%を占めるとされています1)。また、全国がん登録での年間罹患数は約 7,000人と報告されています2)。
原発不明がんは、種々の腫瘍が混在した不均一な疾患グループで構成されていますが、その一部は予後良好な患者群とされ、腫瘍の局在や組織型に基づいた特定の治療法が有用と考えられています3,4)。一方、残りの約 80%は、特定の治療方針が定められていない「予後不良群」であり、確立された標準治療がなく3-5)、生存期間の中央値は 6〜 9ヵ月とされています1)。
●主な転移臓器、転移臓器数
原発不明がんで認められる、主な転移臓器は、リンパ節、肝臓、骨、肺などです。
原発不明がんと診断された1,000例の解析結果6)では、リンパ節転移を 42%、肝転移を 33%に認めたことが報告されています。また、転移臓器数が 2以上の、複数の臓器で転移巣を認めた患者が過半数を占めていました。
●原発巣はどこに?
原発不明がんと診断され、死亡後に病理解剖が行われた 884例の解析結果7)では、73%で原発巣が同定されたことが報告されています。原発巣として多く認められたのは、肺、膵臓などでした。なお、死亡後の病理解剖においても、27%は原発巣が不明でした。
●なぜ、原発巣が特定されないのか?
原発巣が特定されない原因として、さまざまな説が提唱されています8) 。
記事更新:2023年11月
動画更新:2023年12月