オプジーボ

MENU

薬物療法エビデンスガイド:肺がん編~非小細胞肺がんに対する化学療法の歴史~

7肺がん領域におけるがん免疫療法

  • 国内試験
  • 海外試験
  • 国内/海外試験

※年号は論文が発表された年を示しています

がんに対する免疫療法は、1893年William B ColeyによるColey‘s toxinを用いたのが最初と言われている。1970年のFrank M BurnetのImmune Surveillance(免疫監視機構)理論を契機とし一世を風靡した。1970年代の非特異的免疫療法、1980年代のBRM(Biological response modifier)療法、1990年代の免疫遺伝子治療、2000年代のペプチドワクチン療法など様々な試みが行われたものの、がんに対する明らかに有効な治療成績は得られなかった。

免疫チェックポイントに対する抗体は、新しい発想によるがん免疫療法である。すでにわが国で承認されているのは抗CTLA-4抗体イピリムマブと抗PD-1抗体ニボルマブである。最初にこの抗体をがんの治療に応用しようと考えたのはJames Allisonで、マウスを用いた基礎研究が1997年に報告されている。人に投与されたのは2000年であり、米国FDAは2011年に悪性黒色腫に対してイピリムマブを承認している。

免疫チェックポイント阻害薬を用いたがん免疫療法は、がんによる免疫抑制状態を解除して免疫応答を回復させ、その結果、がん細胞の破壊、増殖抑制を促進するというものである。リンパ球などの免疫担当細胞には免疫チェックポイント分子であるProgrammed cell death-1(PD-1)が発現しており、PD-1にPDリガンド(PD-L1またはPD-L2)が結合すると、免疫応答を抑制するシグナルが伝達されT細胞が不活化される1)。一方、がん細胞にはPD-L1が発現しており、PD-1と結合することによってT細胞からの攻撃を回避する“がん免疫逃避機構”の存在が明らかになっている2)。つまり、PD-1とPD-L1の結合を阻害すれば免疫抑制状態を解除できると考えられ、この仮説に基づいて抗PD-1抗体薬であるニボルマブやペンブロリズマブが開発された。このうちニボルマブは、悪性黒色腫を対象とした国内第Ⅱ相試験(ONO-4538-02試験)において抗腫瘍効果と安全性が認められ、2014年7月、世界に先駆けわが国において根治切除不能な悪性黒色腫の効能・効果で承認を取得した。

  1. 1) Francisco LM, et al. lmmunol Rev 2010; 236: 219-242.
  2. 2) Dong H, et al. Nat Med 2002; 8: 793-800.

NSCLCに対するニボルマブの有用性は、治療歴を有するNSCLCを含む悪性腫瘍を対象とした国内第Ⅰ相試験(ONO-4538-01試験)1)および海外第Ⅰ相反復投与試験(CA209003試験【2012年、2015年】2, 3)にて評価され、いずれの試験においてもニボルマブ単剤投与の安全性と持続的な抗腫瘍効果が認められた。続いてニボルマブの有効性と安全性を検証するために非盲検非対照の国内第Ⅱ相試験が実施された。プラチナ製剤を含む化学療法に抵抗性を示す根治照射不能なⅢB期/Ⅳ期又は再発の扁平上皮(SQ) NSCLC 35例を対象としたONO-4538-05試験【2015年】4)では、主要評価項目であるORR[中央判定]は25.7%(9/35例)、副次的評価項目のOS中央値は未到達、PFS中央値は128日であった。また、プラチナ製剤を含む化学療法に抵抗性を示す根治照射不能なⅢB期/Ⅳ期又は再発の非扁平上皮(Non-SQ) NSCLC 76例を対象にしたONO-4538-06試験【2015年】5)では、主要評価項目であるORR[中央判定]は19.7%(15/76例)、副次的評価項目のOS中央値は未到達、PFS中央値は85日であり、いずれの試験においても有効性と安全性、忍容性が確認された。海外では、プラチナ製剤併用療法およびその他の全身治療を1回以上施行後に再発・進行が認められたSQ NSCLC 117例を対象とした第Ⅱ相試験(CheckMate 063試験【2015年】6)が実施され、主要評価項目であるORRは14.5%、奏効期間中央値は未達、OS中央値8.2ヵ月という有効性が示された。

さらに、2つの海外第Ⅲ相試験(CheckMate 017試験CheckMate 057試験)では、プラチナ製剤併用療法による1次治療中または治療終了後に再発・進行が認められたSQ NSCLC、Non-SQ NSCLCに対するニボルマブとドセタキセルの有用性が比較された。このうち、SQ NSCLC 272例を対象としたCheckMate 017試験【2015年】7)では、主要評価項目であるOSの中央値はニボルマブ群9.2ヵ月、ドセタキセル群6.0ヵ月と、ニボルマブ群は死亡/病勢進行リスクを41%低減した(HR:0.59、95%CI:0.44-0.79、p<0.001)。Non-SQ NSCLC 582例を対象としたCheckMate 057試験【2015年】8)においても、主要評価項目であるOSの中央値はニボルマブ群12.2ヵ月、ドセタキセル群9.4ヵ月と、ニボルマブ群は死亡/病勢進行リスクを27%低減した(HR:0.73、96%CI:0.59-0.89、p=0.002)。いずれの試験においても、ニボルマブの良好な安全性プロファイルが示された。

これらの結果に基づき、ニボルマブは米国では2015年3月に「プラチナ製剤を含む化学療法による治療中または治療後に進行が認められた再発・進行扁平上皮非小細胞肺癌」、同年10月には非扁平上皮がんを含む「再発・進行非小細胞肺癌」を効能・効果として承認され、わが国では2015年12月に「切除不能な進行・再発の非小細胞肺癌」を効能・効果として承認を取得した。

  1. 1) 小野薬品工業. 承認時評価資料.
  2. 2) Topalian SL, et al. N Engl J Med 2012; 366: 2443-2454.
  3. 3) Gettinger SN, et al. J Clin Oncol 2015; 33: 2004-2012.
  4. 4) 小野薬品工業. 承認時評価資料.
  5. 5) 小野薬品工業. 承認時評価資料.
  6. 6) Rizvi NA, et al. Lancet Oncol 2015; 16: 257-265.
  7. 7) Brahmer J, et al. N Engl J Med 2015; 373: 123-135.
  8. 8) Borghaei H, et al. N Engl J Med 2015; 373: 1627-1639.
エビデンスの解説
監修:
日本医科大学付属病院 呼吸器内科 教授  久保田 馨 先生